ハウスメーカー選びで悩む人には典型的なパターンがあります。しかし、コツさえ掴んでしまえば 検討するべきハウスメーカーを判断するのは簡単です。
わたしはハウスメーカー出身のFPとして、これまで たくさんのハウスメーカー選びをサポートしてきました。この記事で、後悔しないためのポイントをお伝えします。

ハウスメーカー選びを間違うと、せっかくのマイホームなのに じゅうぶんな満足感が得られません。
この記事を読めば「悩むべきポイントを見極めて、あなたにピッタリのハウスメーカーを見つける」その具体的な方法がわかりますよ。
悩む人にありがち。ハウスメーカー選びの失敗例


ハウスメーカー選びを成功させるには、失敗例から学ぶのが近道です。
世の中に飛び交う情報に惑わされた結果、多くの人が じぶんの価値観に合わない家を建ててしまいます。あなたは同じ轍を踏まずに、賢い判断をしてください。
ブランド力に影響されやすい



イメージの良いハウスメーカーを教えてください



積水ハウス、住友林業、大和ハウス、セキスイハイム、ヘーベルハウス、ミサワホーム、三井ホーム…。
列挙してもらった企業は、“ブランド力があるハウスメーカー”と言えるでしょう。
ブランドの価値は 品質そのものというより、あなたの頭の中にあるイメージのことを指しています。つまり、ブランド力があるからといって、品質が優れているとは限らないし、その逆も然りなのです。



だけど、イメージは大切でしょ。 住んでても気分がいいし、「どこのメーカーで建てたの?」って聞かれたとき 知られてない会社じゃ、ちょっと微妙だもの。
わたし自身も 住友林業の家に住んでいるので、“ブランド力を重視するタイプ”だと思いますよ。だから、その気持ちは よくわかります。
だけど、あまりブランド力に引っ張られ過ぎると、じぶんが望んでいないのに 割高な買い物をしてしまうかもしれないんです。ハウスメーカーを選ぶときは、品質と価格の兼ね合いも検討しないと うまくいきません。
「ブランド力」「品質」「価格」のバランスをよく考える



ところで、家づくりを行う会社って何社くらいあると思いますか?
低層住宅(3階建て以下)を手掛けるハウスメーカー・工務店は国内に約35,000社もあるんです。そして、2022年度の新設住宅着工戸数は392,453戸でした。
そのうち、上位10社のハウスメーカーが販売した戸数はこれだけです。
順位 | 企業名 | 戸建て販売戸数 |
1位 | 積水ハウス | 10,061戸 |
2位 | 積水化学工業(セキスイハイム) | 9,700戸 |
3位 | 住友林業 | 8,680戸 |
4位 | 旭化成ホームズ(ヘーベルハウス) | 7,367戸 |
5位 | 大和ハウス | 5,762戸 |
6位 | ミサワホーム | 4,603戸 |
7位 | パナソニックホームズ | 3,890戸 |
8位 | トヨタホーム | 3,458戸 |
9位 | ヤマダホームズ | 2,617戸 |
10位 | 三井ホーム | 2,337戸 |
上位10社の合計 | ー | 58,475戸 |
計算してみると、大手10社のシェアは約15%しかありません。かなり少ないと思いませんか? 2つの統計は、“着工戸数”と“販売戸数”という違いがありますが、期間はどちらも1年なので シェアを推測するには差し支えないでしょう。
大手10社は知名度抜群だし ブランド力もある。でも全体からみたら、かなり“レア”な存在なんですね。せっかく家を建てるなら、知ってるハウスメーカー以外も調べてみることをオススメします。



ブランド力や知名度があるハウスメーカーで建てる人は少数派。もっと視野を広げて情報収集しましょう。
ランキングの使い方を間違っている
インターネットの記事って、やたらとランキングが多くないですか? 検索結果には「人気のハウスメーカー 〇〇ランキング」とか、「おすすめハウスメーカー〇〇選」なんてタイトルが溢れています。
ハウスメーカー選びをしている人なら、ついクリックして読んでしまいますよね。とても有意義な情報を提供してくれている記事も多いのですが、ランキングには副作用があるので注意しましょう。
わたしも その副作用にハマった経験がありますけど、順位づけされていると なんとなく 上位のハウスメーカーが「良い会社」のような気がしてくるんです。 これはけっこう危険なので、無意識に間違ったイメージを持たないよう、気をつけてください。



だって ランキングで上位ってことは、良いハウスメーカーなんじゃないの?
やっぱりそう思いますか…。でも「ランキングの根拠は何なのか」をよくチェックしましたか? それがハッキリしないまま ランキング記事を読んでも、頭が混乱するだけで マイナスにしかなりませんよ。
理解を深めてもらうために、3つほど具体例をご紹介しますね。
オリコン「顧客満足度調査【ハウスメーカー/注文住宅】」
ランキングの根拠は「過去12年以内に新築した注文戸建住宅に在住し、かつ選定に関与した全国の25~84歳の男女16,130人を対象に 満足度調査を実施し 集計したもの」とされています。
とても興味深い調査ですが、このランキングを見るときは つぎの2点を念頭におくといいでしょう。
・回答者は、そのハウスメーカーを選んだ(じぶんの)判断は、正しかったと思いたい
・回答者は、じぶんの家のことしか わからない(他と比べてつけた点数ではない)
誰だって、マイホームという高い買い物で失敗したとは考えたくありません。よほどのクレームでも抱えていない限り、じぶんの家に低い評価はしない。わたしだって、そうです。
でも忘れないでくださいね。回答した人たちの満足度と あなたの満足度はまったくの“別物”ですよ。



ランキングを見ると「尖った特徴があって住む人の思い入れが強そうなハウスメーカー」が上位の印象です。
スーモ「ハウスメーカー・住宅メーカーのアクセスランキング」
ランキングの根拠は「各社のアクセス数をもとに作成したランキング」と説明しています。タイトルのまんまですね。
とてもシンプルな指標で順位付けしているだけに、このランキングに じぶんで勝手な解釈はしないほうがいいでしょう。
アクセス数が多い = 人気がある
わたしなら、こんな解釈をしてしまうかもしれません。でも論理的に考えるとムリがありますよね。集計対象になった人たちが “どんな意図でアクセスしたのか”は、誰にもわからないのですから。



純粋にアクセス数のランキングなんです。「上位は良い会社」みたいな錯覚をしないようにしましょう。
ライフルホームズ「住宅メーカー(総合)の人気会社ランキング」
ランキングの根拠は「各社ページの閲覧数とお問合せ数をもとにスコアを算出し、スコアが高い20位までのハウスメーカー・工務店・設計事務所をランキング形式でまとめています」とのこと。
こちらもアクセス数が指標ですが、お問合せ数をプラスしています。かなり興味を持っていないと、わざわざ問い合わせまでしないでしょうから面白いランキングですね。
問い合わせ数が多い = 本気で興味を持っている人が たくさんいる
契約につながるような問い合わせが多いのなら、上位のハウスメーカーは きっと魅力的なのでしょう。
しかし、問い合わせの内容がわからないだけに、どんな理由で興味をもっているのかは、あなたの頭で推測するしかありません。



「どのハウスメーカーから調べ始めようか」という優先順位を決める際の参考にはなりますね。
このほかにも ネットには膨大な数の記事があって、有意義な情報もたくさんありますが、閲覧するときはランキングの根拠を確認する習慣をつけてください。
とりあえず 住宅展示場へ行ってみる



近くの住宅展示場でイベントをやってるみたい。手始めに家族で出かけてみようかしら。
ちょっと待ってください、それは絶対にオススメしません。
どんなに大きな住宅展示場に行っても、そこにすべてのハウスメーカーが揃っているわけないし、地元の工務店はモデルハウスなんて出せないんです。
いきなり限られた選択肢のなかで、マイホームを検討するのは嫌ですよね?
とくに予算が厳しい場合は、モデルハウスでも あまり良い対応をされないかもしれません。住宅展示場に出展するような大手ハウスメーカーは坪単価も高めですから。



だけど、とりあえず住宅展示場に行ってみるだけならいいんじゃない? なんだか楽しそうだし。
それがいちばん危ないんです。住宅展示場で「来場者アンケート」を書くと、翌日から営業電話がかかってくることも珍しくないし、なかには アポなしで自宅までやってくる営業マンもいます。(実際、うちにもやってきました…。)
ゆっくりマイホーム計画を立てようとしていた雰囲気は急変し、数か月後には「断るのも疲れたから、一生懸命やってくれてる〇〇さんの□□ホームで契約しよう」なんて言葉を口にしているかもしれません。
たしかに住宅展示場は楽しいところですが、あとで後悔したくなければ、しっかり事前の準備をしてから出掛けましょう。



住宅展示場の賢い使い方は、こちらの記事↓で詳しく書いています。ぜひ参考にしてみてください。


ハウスメーカー選びで悩むなら、この5つをチェック!





どのハウスメーカーを選んだらいいのかしら? 比較のポイントがわからなくて 悩むわ…。
わかります。ハウスメーカーそれぞれに個性がありますからね。
ここからは、わたし自身がハウスメーカー選びをしたときの体験と、14年間のFP相談で お客さまからお聞きしてきた話をもとに、5つのチェックポイントをお伝えしていきます。



ちょっと面倒に感じるかもしれませんが、ここが肝心です。5つの項目に優先順位をつけて あなたにピッタリのハウスメーカーを選びましょう。
① 価格(すべてコミコミの総支払額)
ハウスメーカを選ぶうえで、なんといっても お金の問題は重要です。
「このハウスメーカーで建てたい!」と思って 打合せを繰り返したあとに、ガッツリ予算オーバーの見積りを出されたらショックですよね?
それまでに費やした時間と労力がムダになって、別のハウスメーカーで 最初からやり直し…。なんて事態は避けなければなりません。



大丈夫!「坪単価」を調べて、ちゃんと予算内に収まるハウスメーカーを選んだもの。
なるほど。でも、それって みんなが陥るワナなんですよ。きっと最終見積を提示されたとき、予想より高くて驚くことになります。その理由を説明しましょう。
そもそも坪単価とは?
だいたい こんな感じなんですが、計算方法のルールが決まってるわけじゃないんです。だから各社が自由に算出した「坪単価」を表示しています。
・建物本体価格に含まれるものが、ハウスメーカーによってバラバラ
・延床面積ではなく、施工床面積を使って坪単価を算出する会社もある
・建材や設備の“標準”が各社で違う(廉価仕様が標準なら安くて当然)
たとえば、建物本体価格に 標準的な付帯工事費を含むハウスメーカーもあれば、まったく含まないハウスメーカーもあるんです。これだけでも ぜんぜん金額が変わりますよね。
また、「施工床面積=延床面積+バルコニー・ポーチ・吹き抜け・ロフト等の面積」なので、施工床面積を使って計算したほうが 坪単価は安くなります。
標準仕様の話はシンプルですね。坪単価を抑えようと思えば、徹底的にローコストの建材・設備を“標準”にしておけばいい。どうせ ぱっと見じゃわかりませんから。



「坪単価」って、アテにならないんだなぁ…。
さらに言えば、坪単価以外に「別途工事費」や「諸経費」も必要になります。あくまで目安ですが、坪単価で計算した金額×1.3倍の予算を組んでおかないと 予算オーバーの可能性大です。
結局のところ、総支払額をじぶんで計算するのは難しい。とはいえ、正確な見積を出してもらうには 候補のハウスメーカー各社と何度も打合せして建築プランを決めなければなりません。
そんな効率の悪いことをしてたら疲れ果てちゃいますよね。
しかし、安心してください。なんと「所要時間たったの3分でスマホさえあればOK」の解決法があるんです。もちろん完全無料。
それは無料の一括資料請求
・あなたの希望に沿ったオリジナル間取りプランがもらえる
・間取りプランを反映した資金計画書がもらえる
・見積りの比較ができるから、ハウスメーカーを選定しやすい
・複数社のカタログが 一括で請求できる
・土地探しの希望を伝えれば、未公開物件を含む情報がもらえる
・すべて自宅に郵送されるから、大幅に時間と労力を節約できる
ハウスメーカーの選定と同じように、土地探しも大変です。
同じ条件の土地は1つしかないし、誰かが売りに出してくれなければ 買えないので、ハウスメーカー選びより難しい…。
ところが、タウンライフ家づくり



住宅展示場に行かなくても欲しい情報は手に入ります。いろんなハウスメーカーの間取りプランをもらって比べてみましょう。
たとえばタウンライフ家づくり


なお、付帯工事費に含まれる 電気工事や屋外給排水工事などの見積りは、建築場所が未定だと渋られるかもしれませんが、「標準的な立地条件」で算出するように交渉しましょう。
② 性能(耐震性 | 気密性 | 断熱性)
家の性能が高ければ、安心して快適に暮らせます。逆に性能が低いと、不満が募って後悔することにもなりかねません。



ハウスメーカー選びの大事な要素です。時間をかけて比較してください。
【耐震性】
建物が“地震のエネルギーをどれだけ吸収できるか”という能力。または、地震に対して建物が耐えられる度合いのこと。柱や梁の強さや粘り、耐力壁の量やバランスなどによって性能が左右される。
【気密性】
建物が“どれだけ密閉されているか”という能力。延床面積に対する隙間の割合を示すC値で評価する。C値が小さいほど気密性が高い。
【断熱性】
建物が“外気の暑さや冷気を室内に入れないよう どれだけ遮断できるか”という能力。熱貫流率とも呼ばれる。熱損失係数のQ値で評価され、Q値が小さいほど断熱性能が高い。
住宅性能でいちばん重視するべきなのは、耐震性能です。言わずと知れた“地震大国”の日本。大きな揺れに襲われたとき、あなたと家族の命を守ってくれる家を建てましょう。



耐震性能を比べるときは、国が定めた等級基準をチェックすればOK!
耐震等級 | 地震に耐えられる性能 | どのくらい地震に強いのか |
1 | 建築基準法レベル | 震度6~7に耐えられる |
2 | 建築基準法レベルの1.25倍 | 災害時の避難場所に指定される公共施設 (学校・病院・警察署等)に必要な等級 |
3 | 建築基準法レベルの1.5倍 | 災害時の救護活動・災害復興の拠点の 多くが耐震等級3で建設されている |
オススメは「耐震等級3」。災害時救護活動や復興拠点に求められる基準を満たしているんですから、ものすごい安心感だと思いませんか?



わが家も耐震等級3で建てました。大きく揺れても、家族みんな「この家の中にいると、ぜんぜん怖くないね~」と笑ってます。
ちなみに、耐震等級が高いほど 地震保険の保険料が割引されます。
・耐震等級1 : 10%
・耐震等級2 : 30%
・耐震等級3 : 50%
耐震等級3なら、なんと半額になるんですから 太っ腹ですよね。それだけ地震に強いって証明でもあります。



そんなに地震に強いなら、地震保険に入らなくてもいいんじゃない?
たしかに、建物が壊れることはないでしょうけど、火災が心配です。
大きな揺れによって ガス管や電気配線が破損したり、家具が転倒してストーブなどの暖房器具に接触することで、これまでも多数の火災が発生しました。
もうひとつ忘れてはいけないのが、停電が復旧した際に起こる火災(通電火災)。地震で停電するのは よくあることですが、しばらくすると復旧して電気が流れてきます。すると、スイッチが切れていない電化製品が、(避難所へ逃げて)誰もいない家のなかで通電状態になり、火災を引き起こすんです。



怖いわね…。でも、火災保険には加入するつもりだから大丈夫!
残念ながら、「地震による火災」は 地震保険じゃないと補償されないんです。
いくら地震に強い家を建てたとしても、燃えないわけじゃありません。せっかく割引してくれるのですから 地震保険には きちんと加入して、いざという時のリスクに備えましょう。



さて、「安全」を確保したら 「快適」の出番です。気密性と断熱性を考えましょう。



断熱性が高いほうがいいのはわかるけど、気密性って必要なのかしら? どうせ「24時間換気」で空気を入れ換えるんだから。
いい質問ですね。でも「気密性が低いと24時間換気がちゃんと機能しない」ってご存じでしたか?
住む人の健康を維持するためには、24時間換気が設計通りの性能を発揮してくれないと困ります。
ところが、気密性が低い家は スキマから不規則に空気が入り込むため、正しい入り口である給気口から取り込める空気が少なくなってしまうのです。
そして、スキマから入ってきた空気は 近くのスキマから出てしまったりして、正しい出口である排気口から外に出す空気も少なくなる。




つまり、空気が設計通りに移動してくれないわけですから、「1時間に室内の空気を半分以上 入れ換える」という基準を満たせません。



なるほど。健康な生活のために、気密性が必要なのね。
はい。それだけじゃありません。気密性が低ければ スキマから外の暑い空気や寒いが室内に入ってくるので断熱性も下がります。さらに問題なのは、外気と一緒に湿気が入ってくること。
湿気は室内を漂うだけじゃなく、壁内の木材や断熱材に吸収されて カビや細菌が繁殖することがあります。もしそうなれば、健康に悪影響を及ぼすし、家の寿命まで縮める緊急事態ですよ。







とはいえ、気密性・断熱性を追求しているとキリがありません。
C値やQ値が小さいほど 気密性・断熱性が高いわけですが、こだわり始めるとハウスメーカーが限られてきます。果たしてそれでいいのでしょうか?
たとえば、大開口を採用した開放感のある家にしたかったら、ガクンと断熱性は下がります。どれだけ高性能の断熱ガラスでも、みっちり断熱材の入った壁と比べたら 熱をよく伝えるからです。
冬の暖房時は58%の割合で熱が流出し、夏の冷房時(昼)は73%の割合で熱が入ってきます。


では、気密性・断熱性のために 大開口を諦めるのか? それはちょっと違いますよね。
もちろん、家を建てる地域によって 優先順位が変わってくるでしょう。寒冷地では気密性・断熱性を優先するべきでも、それ以外の地域では 違う判断をしたほうがいいかもしれません。



家に何を求めるのか? あなたの価値観を反映させましょう。
③ 設計の自由度 & プランの提案力



せっかくの注文住宅なんだから、やりたかったことを ぜんぶ実現させたいわ。
いいですね! ぜひ やりましょう。それなら、設計の自由度が高いハウスメーカーを選ぶといいですよ。
構造・工法 | 設計の自由度 | 得意なこと |
鉄骨メーカー | 〇 | 大開口・柱のない大空間・インナーガレージ |
鉄骨(ユニット) | △ | 屋上庭園・インナーバルコニー |
木造メーカー | ◎ | 壁の位置をミリ単位で指定・スキップフロア |
木造(パネル) | 〇 | 1階と2階のあいだに設ける大収納 |
設計の自由度が高いのは 圧倒的に木造メーカーです。あなたが望めば、壁の位置を1ミリ単位でずらすこともできちゃいますよ。ただし、大開口や柱のない大空間を作れないのが残念。



どの工法にするか、わたしも かなり悩みましたが、住友林業のビッグフレーム(BF)構法が解決してくれました!
わたしが求めていたのは、大開口と吹き抜けでした。シンプルな吹き抜けにしたかったので、梁を出さない吹き抜けのプランを ハウスメーカー8社に依頼。ところが、実現できると回答してきたのは2社だけでした。
最後はプランの提案力が決め手になって 住友林業を選びましたが、ビッグフレーム(BF)構法が無かったら もう1社の鉄骨メーカーにしていたことでしょう。
このように「あなたがどんな家を建てたいか」によって、選ぶべきハウスメーカーが絞られます。とくに構造・工法は、設計の自由度に大きく影響するので、あとから「あれもできない、これもできない」と後悔しないよう、前もって慎重に調べてください。



設計の自由度が高いハウスメーカーは、プランの提案力も優れていると感じました。そうでなければ、設計の自由度が生かせないので、当然かもしれませんね。


④ デザイン
デザインは、家の満足度を大きく左右します。それなのに、ハウスメーカーを選ぶときには 意外と軽視されがちな印象です。



どのハウスメーカーでも、自由にデザインを決められるんじゃないの?
もちろんそうなんですが、ハウスメーカーによって それぞれ得意分野があります。たとえばスウェーデンハウスなら“北欧テイスト”や“地中海プロヴァンス風”、ヘーベルハウスなら“スタイリッシュモダン”ですね。
価格や品質だけで選んだハウスメーカーに 苦手なテイストのデザインを求めても、満足できるクオリティーは期待できないでしょう。だったら最初から、あなたの好みにあうハウスメーカーを選んだほうが合理的です。



「デザイン力の高いハウスメーカー」を探す方法って、あるのかしら?
残念ながら ありません。
ひとつの例ですが、ミサワホーム(わたしの古巣)は33年連続でグッドデザインを受賞しています。デザインに対する思い入れの強い会社ですし、デザイン力が高いと言ってもいいでしょう。
でも、すべてのハウスメーカーがグッドデザインの審査に出品してるわけじゃないので、ほかのハウスメーカーと比べた優劣を示すものではないんです。
結局、デザイン力の高さは数値化できないので、気密性のC値や断熱性のQ値みたいに客観的な比較はできないということ。そのハウスメーカーの家を見る人によって、まったく評価が異なります。
ここで、わたしがハウスメーカー選びをしたときの教訓をひとつ。
デザインは直感で選ぶのが正解。それが悩んだときの解決策になる
さんざん情報収集して、住宅展示場で モデルハウスを見てまわると ほんとうに悩みます。しだいに疲れてくると「じぶんの理想は どんな家なのか」わからなくなってきました。
そんなわたしを助けてくれたのが、デザインです。「かっこいい」「美しい」と素直に感じるハウスメーカーを選ぶことで、迷宮から抜け出すことに成功! 9年たった今でも、大満足が続いています。



良いデザインは、日々の生活に潤いを与えてくれますよ。あなたも直感を大事にして、ハウスメーカーを選んでください。
⑤ メンテナンス性能
メンテナンス性能に優れたハウスメーカーを選べば、建てたあとの出費を大幅に節約できます。



メンテナンスってどのくらいお金がかかるの?
相場観を知るために、30坪一戸建てのメンテナンス費用をご覧ください。
修繕の内容 | メンテナンスのサイクル | 費用の目安 |
シロアリ予防 | 5年 | 20万円 |
壁紙の張替え | 7~10年 | 20万円 |
窓サッシ周辺のシーリング | 7~10年 | 30万円 |
外壁の塗装 | 10~15年 | 100万円 |
屋根(スレート葺)の塗装 | 10~20年 | 50万円 |
軒先や軒天の塗装 | 15~20年 | 30万円 |
雨樋や床下の点検・補修 | 15~20年 | 30万円 |
こういうコストって、家を建てるときには なかなか気づかないものですよね。でも、けっこう まとまった金額になると思いませんか?
家をきちんと維持できるなら、メンテナンス費用は安いほうがいいに決まってます。
そこで、簡単なチェックポイントをご紹介しておきましょう。



メンテナンス性能に優れたハウスメーカーを選ぶのに、きっと役立ちますよ。
・初期保証(構造、防水、住宅設備)
・防水システム、屋根材、外壁塗装の耐用年数
・シロアリ対策と保証(木造メーカー)
・錆び対策と保証(鉄骨メーカー)
・換気システムの耐用年数、修理費用、換気フィルターの交換費用
家の購入予算にはシビアな人が多いのに、建てたあとのメンテナンス費用まで考えられている人は少ない印象です。
その結果「住宅ローン返済や教育資金の捻出が難しくなって、マイホーム購入を後悔している」というご相談をたくさん受けてきました。
少しでも気になる人は、こちらの記事を参考にしてみてください。


悩むだけの価値がある! ハウスメーカーが支持される3つの理由


本記事の前半で「ハウスメーカーで建てる人は少数派」というお話をしましたが、その“少数派”の人たちは、なぜハウスメーカーを選んだのでしょう?



それを理解するために、ハウスメーカーと工務店の違いを整理しておきます。
ハウスメーカー | 工務店 | |
会社の規模 | 大きい | 小さい |
対応エリア | 全国展開 | 地元密着 |
工期の長さ | 短い | 長い |
価格 | 高い | 安い |
大開口・大空間 | 対応できる | 対応できない |
オリジナル建材&設備 | あり | なし |
アフターサービス | 手厚い(長期保証など) | 会社によって異なる |
ハウスメーカーを選んだ人たちが 工務店よりも高いお金を払うのは、上の表で太字にした部分を魅力に感じたからです。この3つについて、詳しく見ていきましょう。
「大開口・大空間 」を採用した “開放感のある家”を建てられる
すでに「設計の自由度&プランの提案力」でも触れましたが、大開口・大空間を作ろうと思ったら構造・工法が限られてきます。おそらく工務店では難しいでしょう。
なぜなら、ほとんどの工務店が採用している 一般的な木造軸組工法では、柱と柱の間隔は2間(3,640mm)が最長だからです。大空間のなかに、何本も柱が立ってたらイヤですよね? 同じ理由で、大開口(大きな窓・連続窓)も諦めるしかありません。



せっかくの“大空間リビング”に、柱が立ってたら邪魔だよ。
いっぽう、ハウスメーカーはオリジナル構造(工法)を開発しているため「大開口・大空間」を実現できます。ただし、ハウスメーカーによって 採用できる開口部の大きさは違いますし、柱や壁のない空間の広さもバラバラです。
あなたが “開放感のある家”を求めているなら、鉄骨のハウスメーカーにするか、木造なら オリジナル構造(工法)を持つハウスメーカーを選んでください。
・住友林業「ビッグフレーム(BF)構法」
・積水ハウス「シャーウッド ハイブリッド構造」
・積水ハウス「軽量鉄骨・ダイナミックフレーム システム」
・へーベルハウス「重量鉄骨・システムラーメン構造」
・三井ホーム「Gウォール・Gフレーム構法」
・アキュラホーム「メタルウッド工法」



ハウスメーカーのオリジナル構造(工法)は どんどん進化しています。調べてみるだけでも楽しいですよ。
独自開発のオリジナル建材&設備が魅力
ハウスメーカーは、構造(工法)だけでなく、建材や設備もオリジナル商品を開発しています。もちろん、これらの商品を使えるのは 開発したハウスメーカーだけです。



たとえば、どんなオリジナル商品があるの?
魅力的な商品がたくさんありますが、ほんの一例をご紹介しましょう。
商品の分類 | オリジナル商品の具体例 | 開発したハウスメーカー |
耐震性を高める部材 | GAIASS (複合型・地震吸収システム) | セキスイハイム |
外壁材 | ダインコンクリート | 積水ハウス |
断熱材 | 外内ダブル断熱構法 | 一条工務店 |
サッシ | DETAIL WINDOW (木製サッシ3層ガラス窓) | スウェーデンハウス |
キッチン | セラミックカウンターキッチン | 住友不動産 |
全館空調 | スマートブリーズ | 三井ホーム |
ハウスメーカーは、こうしたオリジナル商品を開発することで、自社のブランド価値を高めているんですね。



工務店でも、オリジナル商品を開発すればいいのに。
残念ながら、それは難しいでしょう。オリジナル商品の開発には研究コストがかかりますし、大量に販売できるスケールメリットがなければ採算が取れません。
そのため 工務店では、建材メーカーや設備メーカーの一般的な商品を仕入れて 家を建てます。もちろん 商品の性能はまったく問題ないのですが、どこの工務店でも採用できるので 独自性はありません。



オリジナル建材&設備は、そのハウスメーカーの魅力を支えるほどの力を持っています。要注目ですよ!
ずっと安心が続く、経営の安定性
ハウスメーカーでは、アフターサービス専門のグループ会社があったり、自社内に専門部署を設けているので、トラブルが発生したら、いつでも素早く対応してくれます。



“アフターサービス専任のプロ”に任せらるなら安心ね。
いっぽう、工務店は比較的 従業員が少なく、一人がいろんな部署を兼任していることも珍しくないため、忙しいときにトラブルが重なると フットワークが悪いかもしれません。



ところで、住宅の保証期間って何年だと思いますか?
「住宅品質確保法」で定められている保証期間は10年。それ以上の長期保証は各社の判断にゆだねられています。では、どのくらい保証期間を延長してくれるのか? 具体例を見てみましょう。
ハウスメーカー | 初期保証 | 最長保証 | 延長条件 |
ミサワホーム | 35年(構造体) | 60年~永年 | 10年毎の有償点検・補修等 |
積水ハウス | 30年(構造体等) | 60年~永年 | 10年毎の有償点検・補修等 |
大和ハウス | 30年(構造体等) | 60年~永年 | 5年毎の有償点検・補修等 |
タマホーム | 10年 | 60年 | 5年毎の有償点検・補修等 |
一条工務店 | 10年 | 30年 | 10年毎の有償点検・補修等 |
アイフルホーム | 10年 | 30年 | 10年毎の有償点検・補修等 |
初期保証で35年のミサワホームはすごい!元社員として誇らしいです。さらに10年毎の有償点検・補修等の条件をクリアすれば 60年~永年保証。めちゃくちゃ太っ腹じゃありませんか。
工務店はどうなのかというと、長期保証に対応していない場合もあるようです。
そもそも「60年~永年」みたいな保証を約束するには、それまで会社が存続していなければならないわけで、経営基盤の安定性が問われるでしょう。



「60年保証する」って言われても、会社が廃業とか倒産しちゃったら 依頼先がなくなっちゃうもんな…。
もちろん大手ハウスメーカーが経営危機に陥ることもあり得ます。しかし、そのまま倒産すれば社会に与えるインパクトが大きいため、産業再生機構が乗り出すなど さまざまな救済策が施されるのが通例です。



「家を建てたあとも ずっと続く安心」を重視する人は、工務店より ハウスメーカーが合ってますね。


まとめ:理想のハウスメーカーと出会うために、全力で悩む
ハウスメーカー選びでは、わたしも本当に悩みました。でも、理想のマイホームに9年住んでみて「あのとき時間をかけて悩んでよかった」と思ってます。
情報収集は孤独だし面倒くさい。ハウスメーカーだけでも大変なのに、工務店まで候補に入れたら 比較に時間がかかる。ここまでやる必要あるのかな…。そんな愚痴も言いたくなるでしょう。
ひと足先にハウスメーカー選びを卒業した者として 言わせてください。あなたがかけた時間と労力は すべて、家を建てたあとの満足につながっていますよ。
最後にもういちど、ポイントをまとめますね。
・いきなり住宅展示場に行かない。出掛けるのは きちんと情報収集をしてから。
・「価格」「性能」「設計の自由度」「デザイン」「メンテナンス性能」に優先順位をつける。
・「高いお金を払ってまで ハウスメーカーを選ぶ理由」が じぶんにあるのか、よく考える。
ハウスメーカーにしても 工務店にしても、いちど決めたら 後戻りはできません。思う存分 悩んで判断をしたときは、スッキリ心が晴れるような感覚になるもの。あなたも ぜひ、そんな体験をしてください。



家にいる時間が幸せでしかたない。そんな最高のマイホームを手に入れられますように!